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アルブル通信・感動エッセイ 2018年

2018年11月号「先を譲る」 ~「お先にどうぞ」は、最高の人間関係のコツ~

私は庭園デザイナーとしての仕事で、しばしば外国に行きますが、「やはり、国によってお国柄というものは違うものだなぁ」という思いをいつも持ちます。
 たとえば、中国では、車を運転しているのを見ていると、入ろうとする車に道を譲るということが、
ほとんどありません。
しかし、それでも入ろうと、強引に何度もチャレンジして、強引に入り込む。道路はさながら〝バトル〟の趣なのです。
 それぞれがあくまで自分を主張する、という印象ですが、中国という国では、それがいちばん「理にかなった行動原理」であり、もっといえば、お国柄、文化に合った生き方ということなのでしょう。
 日本では、なにがなんでも自己主張を通す、とにかく自分が先に行く、ということに徹すると、仕事も人間関係もうまくいきません。
 積極的にといえば、たしかにそうなのですが、独りよがりの積極性は、周囲のサポートを得ることが難しくなります。
「どうせあいつは、なんでも自分が先頭に立たなきゃ気が済まないんだから、勝手にやってもらおうぜ」ということになって、いざ、なにか協力が必要な状況になっても、そっぽを向かれてしまうのです。
 私は、「お先にどうぞ」といえる二番手が、もっともよいポジションだ、と思っています。前に出るのはひとまず措いて、自分を磨くこと、仕事なら知識や技術、ノウハウを身につけることに一生懸命になる。
 力のある二番手なら、自分が動かなくても、いずれは周囲から前に押し出されることになります。これが最高の強みなのです。自分から先頭に立とうとする人とは違って、押し出された人は、足を引っ張られることがありません。
 それどころか、なにかあれば、周囲は喜んで手を貸してくれる。気がついたら、統率力のあるリーダーになっているのが、「お先にどうぞ」の二番手なのです。
 仕事を離れた人間関係でも、「お先にどうぞ」の精神が周囲を明るく、幸せにします。
電車の空いた席に同時に座ろうとして、お互い譲らなければ、空気はどこか険悪なものになります。
しかし、「お先にどうぞ」と譲ってあげたら、「ありがとうございます」と笑顔で感謝の言葉が返ってくる。
 仲間や友人たちとの食事会、飲み会でも、われ先にと料理に手をつけるのではなく、「お先にどうぞ」としていたら、必ず、「あの人、ほんとにいい人だったな」という定評が高まるはずです。

 譲られて気持ちがいいと感じない人はいませんし、先を争わないこちらに気持ちの余裕を感じもする。余裕を持って生きている印象を持たれるなんて、かっこよくて、おしゃれじゃないですか。

「和顔愛語(わげんありご)」という禅語があります。実は「愛語」は「和顔」と対語になっています。
この言葉が出てくるのは『大無量寿経(だいむりょうじゅきょう)』という経典。
穏やかな笑顔と、思いやりのある言葉で人に接しなさい、という意味ですね。
「無財の七施」にも「和顔施(わげんせ)」と「言辞施(ごんじせ)」というものがあります。
 前者は穏やかな笑顔で接すること、後者は思いやりのある言葉で語りかけることですから、「和顔愛語」を実践したら、「七施」のうちの二つの布施行(ふせぎょう)も同時に行っていることになるのです。
「お先にどうぞ」の行動を続けていくことは、「和顔愛語」の実践そのものです。二つの布施行を、日々、〝行じて〟いるのですから、周囲が明るく、幸せになり、自分も心地よく生きていけるのは、当然すぎる結果だといってもいいでしょう。
 人生は一日一日の積み重ねです。一日を心地よく生きることが、充実していい人生をつくっていくことにつながっています。
 ぜひ、「お先にどうぞ」をあなたの行動規範にしてください。
 ※一部抜粋


「心配事の9割は起こらない」
枡野 俊明 著
《アルブル部》平内 竜治 選

2018年11月号「先を譲る」 ~「お先にどうぞ」は、最高の人間関係のコツ~