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アルブル通信・感動エッセイ 2018年

2018年8月号「非常識なお願い」

「非常識なお願い」

 あなたには、「叶えたい夢」がありますか?
 そして、もし、夢を叶えるためには、誰かの許可が必要で、その説得がとても難しそうだったら、どうしますか?
 社会人になったばかりの頃の私にも、1つの夢がありました。
 そしてその夢を叶えるためには、とても怖い人に「非常識なお願い」をしなければならなかったのです。

 かつて日本テレビ系列で年に一度、数週間にわたって放送していたスペシャル番組「アメリカ横断ウルトラクイズ」。
 一般視聴者にクイズをさせながらアメリカ大陸を横断し、チェックポイントで敗者を1人ずつ帰国させるというスケールの大きな内容で、最高資料率は28.5パーセント。現在の紅白歌合戦なみの「高視聴率番組」でした。
 私がこの「ウルトラクイズ」の魅力にハマったのは、中学生のとき。
 出場の資格を得られる年齢になるのを待ちに待ち、第1次予選の○×クイズに初挑戦するも、結果は一問目落ち。
 その初挑戦から苦節5年、やっとのことで奇跡的に予選を突破し、本戦へのキップを手に入れたのは、新卒社員として社会に出た年のこと。
 私の心の中では、もう参加の意思は固まっていました。

 し ・ か ・ し。
「ウルトラクイズ」の本戦に出場するためには、会社を丸々1ヶ月も休まなければならなかったのです!
「入社したてのど素人が、そんな大それたことを言い出してよいのか?」という思いはありました。でも、「ウルトラの旅に参加したい」という思いのほうが、100倍くらい大きかった・・・・・・。

「おまえ、こんなもの、まっとうな社会人が参加できると思ってんのか!」

「ウルトラクイズ」の日程表を見て、会社の役員が私に最初に言ったひと言です。
 そのわずか1分前、私が「テレビのクイズ番組の予選に通りました。本戦はアメリカで行なわれます」と言ったときは「ほうっ」という顔をしていた役員。
 しかし、その日程表を見るうちに、その表情はだんだんと険しいものに・・・・・・。
 それはそうです。
 日程表は数ページにわたり、しかも帰国予定は出発日から1カ月後。
 有給休暇では足りず、決勝まで行くと新入社員でありながら「欠勤3日」のオマケ付きなのです。
 役員の言葉に対して、常識外れな申し出をしていることを百も承知の私は、返す言葉もありません。
 ただただ、役員の目を見て、心の中で同じ言葉を繰り返していました。

「行かせてください。行かせてください。行かせてください・・・・・・」
 すると、説教をしていた役員がふいに「んっ? こいつは本気だな」という思いに変わる瞬間がありました。
 急に表情が和らいで、「まっ、社員を1人、1ヶ月休ませるくらいの余裕があってもいいか・・・・・・」と言ってくれたのです。
 どんなときも、「本気」は他人を説得する最終兵器になり得るのですね。

 結局、無理をおして参加した「ウルトラクイズ」では決勝戦まで進むことができ、その体験は私にとって一生の宝になりました。
 単なる経験や思い出としてではなく、今でも、はじめて編集者とお会いするときなどに話題にすると、とても盛り上がって打ち解けることができるのです。
 あのとき、おっかない役員を恐れずに、最終兵器を使って本当によかった!
「本気でお願い」という最終兵器。
 あなたも、ここぞというときに使ってくださいね。



心に元気があふれる50の物語
西沢 泰生 著
《アルブル部》廣瀬 英子 選

2018年8月号「非常識なお願い」